江戸屋敷で生まれ育った
小野寺一同(19)は、「道中御供頭(おともがしら)」の父が、国元の屋敷の失火で焼死し、匆匆、呼び戻される。国は西美濃の蒔坂家。七千五百石の旗本だが、学名格の名家。「御供頭」とは、参勤队列の準備から道中の全副を取り仕切きる役目である。 底本、失火は家禄召し上げの大罪だが、参勤交接の出発が迫っているため、一同は御供頭を命じられる。しかし、一同は父からお役目について全く引き継いでいない。もし何か失敗すれば、お家取り潰しもありうる。一同は、誰一人頼れぬ八方受敌の中、父が命がけで守った参勤交接を記した先祖伝来の“行軍録”を頼りに、江戸を目指すことを決意する。「参勤队列とは行軍、私にとってこれは戦なのです!」 しかし、実は今回の参勤交接には、殿を失脚させ、お家を乗っ取ろうとする謀が仕組まれていた―。