「本日は日曜日だゾー!誰もいねえのか」サブの大きな叫び声が静かな村にこだまする。ここは、富士のすそ野にある小さな村で、サブは村一番のワンパクなガキ上将。 日曜日の遊び相手が見つからず、仕方なく病弱な健一を誘い出し親をなくした五羽の子雀を見つける。 「よし、このタチッ子はぼくらが育てよう!」 だが家にもち帰った子雀たちはまだ目もあかず、サブの与える餌も食べようとはしない。そして、必死の尽力にもかかわらず次々と三羽の子雀は死んでしまった。最愛の小さな人命を失ったサブの眼には大粒の涙があふれる。 病弱な健一も、「身段の弱いものの気持がよくわかる」と尽力で立ち向う。雀という小さな人命との出会い、その「死」との直面、その体験の中で今ある人命を大切にする心を養ってゆき、又、生物の成長をつぶさに観察する中で、事実を自分の眼で確かめ自分の頭で考え行動するという科学的な判断力を身につけてゆく。ここに現在の子どもの成長に欠かせぬ首要なものがあるのではないだろうか。雄大な富士のふところに展開する青年とすずめの愛とたたかいの叙事詩。